「動かない鳥」として、今や動物園の主役級の人気を誇るハシビロコウ。 その凛々しくも愛嬌のある姿に魅了されている方も多いはず。
でも、彼らがどうやって生まれ、どうやって育つのかをご存知でしょうか? そこには、可愛らしい雛の姿からは想像もつかない、野生の厳しさと深い愛の物語がありました。
1. 産毛の雛と、残酷な「命の選択」
ハシビロコウの卵は、鶏の卵よりも二回りほど大きく、薄いブルーグレーをしています。そこから生まれてくる雛は、全身をグレーのふわふわな産毛に包まれた、まるでぬいぐるみのような姿です。(以下の動画の1:17あたりを確認ください)
しかし、その愛くるしさとは裏腹に、ハシビロコウの子育てには「残酷な掟」が存在します。
通常、ハシビロコウはスペアとして2-3個の卵を産みますが、育つのはたった一羽。強い雛が弱い雛を攻撃し、親鳥はあえてそれに介入せず、一羽だけを確実に育てる道を選びます。広大な湿地で生き抜くための、太古から続く「種の生存戦略」なのです。
2. 不器用なまでに献身的な「親の愛」
選ばれた一羽に対する親鳥の献身ぶりには、目を見張るものがあります。
アフリカの湿地の厳しい直射日光から雛を守るため、親鳥は嘴に水を含んで運び、雛の体に「打ち水」をして体温を下げます。また、捕らえたナマズを自分の嘴で丁寧に噛み砕き、雛が飲み込みやすいようにして与えるのです。
あの無愛想に見える嘴が、この時ばかりは、世界で一番優しいピンセットのように見えてきます。
(さらに気になる方は、NHKの「ダーウィンが来た! 『強く優しい!巨大怪鳥ハシビロコウ』」もご確認ください)
3. 世界でわずか2例。人工繁殖という「厚い壁」
野生では確認されている子育てですが、飼育下での繁殖は極めて困難です。世界を見渡しても、人工繁殖に成功したのはベルギーとアメリカのわずか2例(※諸説あり)のみ。
日本国内でも、飼育員さんたちの熱い挑戦が続いています。
そして、千葉市動物公園の「しずかちゃん」の存在も忘れてはいけません。
しずかちゃんは国内で唯一、産卵が確認された個体です。無精卵ではありますが、これは「日本の環境でも産卵までたどり着ける」という大きな希望の光となりました
ハシビロコウのしずかが15日に卵を産みました。オスとのペアリングが成功していないため、無精卵となります。国内メスの8羽中、唯一産卵をしていますが、ペアリングの成功は大きな課題です。今後、繁殖のための環境整備を検討し、日本初の雛誕生を目指します(飼育2) #千葉市動物公園 #ハシビロコウ pic.twitter.com/34nKxFtUMi
— 千葉市動物公園【公式】 (@ChibaZoo) June 19, 2024

結び:いつか日本で生まれる「奇跡」を願って
世界中を探しても、これほどまでに繁殖が難しく、一羽の誕生が待ち望まれている鳥は他にいないかもしれません。
今、私たちが動物園で会えている個体たちは、そんな過酷な野生を勝ち抜き、あるいは奇跡的な縁で日本へやってきた、特別な存在です。
次にハシビロコウに会うときは、ぜひ心の中で「今日も元気でいてくれてありがとう」と声をかけてみてください。そして、いつか日本でふわふわの雛が見られるその日まで、彼らの「推し活」を全力で楽しんでいきましょう!
ハシビロコウの奥深い魅力を知りたい方はこちらもご覧ください:














コメント