ハシビロコウといえば、あの大きく迫力のあるクチバシに目が行きがちですが、実は「羽」にも大きな魅力が隠されています。
動物園や写真でじっくり観察すると、羽がテカテカしておらず、少し粉を吹いたようなくすんだ青灰色(ブルーグレー)をしていることに気がつくはずです。あのベルベットのような美しいマット感は、いったいどうやって作られているのでしょうか?
今回は、ハシビロコウの羽の色と質感の秘密を、羽の「種類と役割」から紐解いていきます。
ハシビロコウの体を包む「4種類の羽」
鳥の羽はどれも同じように見えますが、実は生えている場所によって形や役割が全く異なります。ハシビロコウの羽は、大きく分けて以下の4種類で構成されています。
1. 正羽(せいう):美しいシルエットを作るアウター
私たちがハシビロコウを見たとき、一番外側に見えているのがこの羽です。軸がしっかりしていてシャキッとしており、ハシビロコウ特有の青灰色のベースカラーを作っています。外部のダメージから体を守る、いわば「アウターシェル」の役割です。




2. 雨覆羽(あまおおいば):風を整えるサポート役
翼(風切羽)の根元に、屋根の瓦のように重なって生えている羽です。翼の表面をなめらかにして空気抵抗を減らします。ハシビロコウが翼を広げると2メートルを超えますが、この巨大な翼を広げてバッサバッサと力強く飛ぶための空力的なサポートをしています。

3. 綿羽(めんう):体温を守る高機能インナー
正羽の下、皮膚のすぐ近くに生えているフワフワした柔らかい羽です(ダウンジャケットの中身と同じですね)。空気をたっぷり含んで断熱材となり、朝晩の寒暖差が激しいアフリカの湿地帯から体温を守ってくれます。

(上野動物園のミリー / 撮影: 2026年6月)

4. 粉綿羽(ふんめんう):ハシビロコウ最大の秘密兵器!
そして、ハシビロコウのあの独特な質感を生み出しているのが、この「粉綿羽」です。 胸や腹部に生えている特殊な羽で、なんと先端が成長するそばからボロボロと崩れ、細かい「粉(ケラチン質のパウダー)」になるという奇妙な性質を持っています。

なぜ色がくすんで見える?「粉」の重要な役割
多くの水鳥は、お尻にある尾脂腺(びしせん)から出る油を羽に塗って水を弾きます。しかし、ハシビロコウはこの機能があまり発達していません。
その代わりに大活躍するのが、先ほどの「粉綿羽のパウダー」です。 彼らはこの粉を全身の羽にたっぷりと擦り込むことで、湿地の水や汚れを弾く「パウダーコーティング」を行っています。
ハシビロコウの羽が少し白っぽく、くすんだマットな質感に見えるのは、全身がこのきめ細かいパウダーで覆われているからなのです。

動物園で観察しよう!システマチックな「羽づくろい」
この粉を全身に行き渡らせるための「羽づくろい(プレエニング)」は、とてもユニークで一見の価値があります。
- 粉を集める: まず、粉綿羽が密集している胸元のあたりに、顔やクチバシをゴシゴシと念入りに押し当てます。
- 全身に塗布: 粉がたっぷりついた自分の頭を「大きなパフ」のように使って、背中や翼にスリスリと擦り付けます。
- 仕上げのブルブル: 最後に全身の羽をブワッと逆立てて大きく身震いし、粉を均等に行き渡らせます。光の加減によっては、白い粉がフワッと宙に舞うのが見えます!

まとめ
ハシビロコウの美しくマットな青灰色の羽は、「粉綿羽」という特殊な羽が生み出す自然のパウダーコーティングの賜物でした。
次に動物園でハシビロコウに会うときは、あのベルベットのような羽の質感や、頭を上手に使った羽づくろいの様子、そして感情で動く冠羽(寝癖)などを、ぜひじっくりと観察してみてくださいね!
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