日本の動物園でも大人気のハシビロコウ。あの動かない不思議な姿や、時折見せるコミカルな行動に癒やされている方も多いと思いますが、実は野生のハシビロコウの生息数は世界でわずか数千羽。絶滅危惧種(VU)に指定されています。
そんな彼らを救うため、アフリカのザンビアで「涙ぐましくも、ちょっとユニークな保護活動」が行われているのをご存知ですか?
今回は、自然の厳しさと人間の温かさが交差する「バングウェウル湿地のハシビロコウ救出大作戦」をご紹介します!
残酷だけどそれが自然。見捨てられる「2つ目の卵」
ハシビロコウの繁殖について、あまり知られていない切ない事実があります。 彼らは一度の繁殖で、数日あけて「2つの卵」を産むことが多いのですが……実際に親鳥に育てられるのは、最初に生まれた「強い1羽」だけなんです。
あとから生まれたヒナは、親鳥からエサをもらえなかったり、先に生まれた兄(姉)のヒナに激しく攻撃されたりして、やがて命を落としてしまいます。「なんて残酷な……」と思うかもしれませんが、これは限られたエサ環境の中で、確実に1羽の強い個体を生き残らせるためのハシビロコウなりの生存戦略(きょうだい殺し:Siblicide)なのです。
しかし、全体の生息数が激減している今、「なんとかその『2つ目の卵』の命も救えないか?」と立ち上がった人々がいました。
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カヌーで8時間!卵を救うレスキュー隊
舞台は、ザンビア北部にある広大な「バングウェウル湿地」。ここで保護活動を行っている国際NGO『African Parks』は、「Shoebill Nest Protection Programme(ハシビロコウ巣穴保護プログラム)」を立ち上げました。
彼らのミッションは、広大な湿地に点在するハシビロコウの巣を現地のコミュニティと協力して監視し、見捨てられてしまう運命にある「2つ目の卵」を人間の手で保護すること。
しかし、相手は大自然の湿地帯。なんと、巣穴にたどり着くまでにカヌーを漕いで片道8時間もかかることがあるそうです!スタッフはポータブル孵卵器(インキュベーター)をカヌーに積み込み、割れないよう細心の注意を払って卵を保護施設へと運び込みます。

セサミストリートの人形師が協力!?「リアル鳥人形」で育児
無事に施設で卵が孵っても、本当の試練はここからです。 彼らの最終目標は、あくまで「野生に返すこと」。そのため、ヒナに人間を「親」だと勘違いさせてしまう(刷り込み=インプリンティング)ことだけは絶対に防がなければなりません。
そこでスタッフが導入したのが、「カモフラージュ服で全身を隠し、ハシビロコウの頭の形をしたリアルなハンドパペットを使ってエサをあげる」という驚きの方法です。

[画像引用元:African Parks]
実はこのパペット、ただの人形ではありません。なんと、アメリカの超有名番組『セサミストリート』や『マペット・ショー』を手掛けたエミー賞受賞パペッター(人形師)、ビル・ダイアモンド氏が特別にデザインして製作したものなんです!
ハリウッド級のクリエイターの技術が、アフリカの湿地でハシビロコウの命を繋いでいるなんて、なんだか胸が熱くなりますよね。実際の保護活動や湿地の様子は、こちらの公式動画からも見ることができます。
大空へ羽ばたいたSam(サム)とBwalya(ブワリャ)
この施設には、人間の徹底した(そしてユニークな)サポートによって命を繋いだヒナたちがいます。
これまでに、Sam(サム)やBwalya(ブワリャ)と名付けられたヒナたちが、人間の姿を一切見せない環境でたくましく育ち、自然へと帰るための訓練(ソフトリリース)を経て、無事に湿地へと放鳥されました!
彼らは現在、背中にGPSトラッカーを背負い、スタッフに遠隔で見守られながら、自力で魚を捕まえて元気に野生を生き抜いています。
彼らに続いて、BonaやMalaika、そしてHappyといった後輩のヒナたちも無事に放鳥されており、Happyにいたっては自分でヘビを捕まえて食べるなど、大自然の中で立派なハシビロコウへと成長しているそうです。本来なら消えていたはずの「2つ目の命」が、こうしてアフリカの空を繋いでいます。
まとめ:私たちがハシビロコウのためにできること
ザンビアのバングウェウル湿地で行われている「2つ目の卵」を救うプロジェクト、いかがでしたでしょうか?
遠いアフリカの話に思えますが、私たちがハシビロコウに関心を持ち、こうした現地の保全活動を知ること、そして発信していくことも立派な支援の第一歩です。「African Parks」のような団体へのドネーション(寄付)や、エコツーリズムを通じて現地にお金を回す仕組みなど、ハシビロコウの未来を守るルートは確実に広がっています。
動かない鳥ハシビロコウが、これからもずっとアフリカの湿地で不敵に笑っていられるように、日本からも温かいエールを送り続けたいですね!


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