フランクフルトでのビロ活を終え、無事に出張の目的地ミュンヘンに到着した管理人のハシビロリン。
さて、せっかくミュンヘンにいるのだから、「この町にもハシビロコウがいないだろうか?」と気になってしまうのがファンというもの。調べてみると、生きたハシビロコウこそいないものの、世界最高峰の研究機関に非常に貴重な剥製が保管されていることが分かりました。
今回は、その施設を一目見ようと足を運んだ際のエピソードと、最新技術で紐解かれたハシビロコウ剥製の知られざる歴史をご紹介します。
乗り継ぎ時間をハシビロコウに捧ぐ:
ヨーロッパへのフライトで乗り継ぎ地になりやすいフランクフルトですが、実は絶好の「ビロ活」スポットでもあります。世界的なスケールを誇るゼンケンベルグ博物館の貴重な剥製や、かつてハシビロコウが暮らしていた動物園での足跡巡りなど、見どころが盛りだくさん。限られた時間でドイツの鳥類展示を堪能した半日観光の様子は、ぜひこちらをご覧ください。


ミュンヘンの動物園にハシビロコウはいる?
ミュンヘンに到着して真っ先に調べたのは動物園の飼育情報ですが、残念ながら現在ミュンヘンでハシビロコウを見ることはできません。しかし、この街には鳥類学の歴史を語る上で欠かせない「非常に貴重なハシビロコウの剥製」が存在しています。
貴重な標本が眠る研究機関「ZSM」とは
その剥製が保管されているのは、ZSM(Zoologische Staatssammlung München:ミュンヘン動物学州立コレクション)です。ここは分類学や動物地理学を専門とする、世界最大級の州立研究所。研究者のための施設であり、一般公開はされていませんが、せっかくなのでその場所の空気だけでも感じようと、建物の前まで足を運んでみました。





中心部から少し離れた閑静な住宅街を歩くと、緑に囲まれた広々とした近代的な施設が現れました。この静寂に包まれた建物の奥深くに、世界中から集められた膨大な数の貴重な標本が眠っていると思うと、不思議な高揚感を覚えます。
3Dスキャンで判明した100年以上前の新事実!
一般の目に触れることのないZSMの標本たちですが、現在、施設のウェブサイトなどを通じて、所蔵されているハシビロコウの剥製が最新技術で3Dスキャンされる様子が公開されています。

[引用: ZSM友の会のウェブサイトより参照引用、Tibor von Zeppelin and intern Martina Darwich position the bird on the scanner. Photo: Markus Unsöl]

[引用: ZSM友の会のウェブサイトより参照引用、Scan: Tibor von Zeppelin]
台座の裏に隠されていた歴史
実は、このスキャン作業の過程で、鳥類ファンを驚かせるある発見がありました。標本をスキャンする際、ラベルには記載されていなかった情報が、剥製の台座の裏側から見つかったのです。
そこに記されていた内容を読み解くと、このハシビロコウはなんと1873年という遥か昔に、中央アフリカのマルノ(Marno)という地域で撃ち落とされ、捕獲された個体であることが分かりました。
さらに、その後しばらくは皮だけの状態(仮剥製)で保管されていたと推測されますが、1900年になって、剥製師のグスタフ・キュストハルト(Gustav Küsthardt)の手によって、旧アカデミーでの展示用に現在の立体的な剥製(本剥製)へと仕立て直されたという歴史が刻まれていたのです。
1870年代といえば、日本はまだ明治維新を迎えて間もない頃。そんな時代にアフリカで採取されたハシビロコウが、世紀を跨いで剥製となり、現代まで大切に受け継がれているという事実に、ただただ驚かされます。

[引用: ZSM友の会のウェブサイトより、The old inscription from the exhibition hall of the Old Academy. Photo: Markus Unsöld]
まとめ:ドイツの鳥類研究と標本保管の執念に敬意を
ラベルの裏側に隠されていた100年以上前の記録。それが現代の3Dスキャン技術をきっかけに再び日の目を見ることになったというエピソードは、鳥類の生態だけでなく、研究そのものの歴史のロマンを感じさせます。
さらに、ドイツにおけるハシビロコウの歴史は、こうした学術的な分野にとどまりません。古くは1924年、野生動物映像作家のベングト・ベリ(Bengt Berg)が著書『アブ・マルクブ(Abu Markub)』でハシビロコウを取り上げ、翌年には同名の映画が公開されています。また、ドイツで長く愛される「アウクスブルク人形劇」の作品『氷の国のウルメル(Urmel aus dem Eis)』では、「シュッシュ(Schusch)」という名のキャラクターとして登場し、子どもたちの人気者として活躍してきました。
100年以上も前の標本をこれほど完璧な状態で保管し続け、最新の技術を用いてさらなる研究へと繋げていく。ドイツの研究機関が持つ標本保存への強い執念と、鳥類学への多大な貢献には、深い尊敬の念を抱かずにはいられません。
世界のハシビロコウたちに会いに行こう
今回のドイツ滞在のように、海外の動物園には日本とはまた違った環境で暮らす魅力的なハシビロコウたちがいます。旅行や出張のついでに、少し足を伸ばして現地の施設を訪ねてみませんか?「となりのハシビロコウ」では、世界中のハシビロコウ飼育施設を網羅したリストを公開しています。次の旅の計画に、ぜひお役立てください。

Zoologische Staatssammlung München(ZSM)基本情報
- 正式名称: Zoologische Staatssammlung München (英語: Bavarian State Collection of Zoology)
- 所在地: Münchhausenstraße 21, 81247 München, Germany
- 電話番号: +49 (0)89 8107 0
- FAX: +49 (0)89 8107 300
- メールアドレス: ZSM@snsb.de
- 公式ウェブサイト: https://zsm.snsb.de/
ZSMは研究を主目的とした施設であり、博物館のような一般向けの常設展示は行っていません。今回の訪問も外観のみとなりました。研究者としての訪問は可能のようですが、事前に連絡を入れるか、公式サイトの案内を確認することをおすすめします。
参考文献
- ZSM友の会公式ウェブサイト Objekt des Monats Dezember 2022; https://freunde-zsm.de/2022/12/objekt-des-monats-dezember-2022-der-schuhschnabel-balaeniceps-rex-gould-1850/
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