「動かない鳥」として有名なハシビロコウ。動物園ではじっと立っている姿ばかりなので、「そもそも飛べるの?」と思う方も多いはずです。
答えは「飛べます」。翼を広げると230〜260cmもあり、野生では上昇気流に乗って空高く輪を描くこともあります。この記事では、体の大きさと翼、飛び方の特徴、GPS調査でわかった移動距離、そして日本の動物園で飛ぶ姿が見られるかをまとめました。
ハシビロコウの大きさ:翼を広げると約2.5m
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 立ったときの高さ | 110〜140cm |
| 体重 | オス約5.6kg、メス約4.9kg |
| 翼を広げた長さ | 230〜260cm |
出典:Hancockほか(1992)『Storks, Ibises and Spoonbills of the World』(Wikipedia英語版経由)。サンディエゴ動物園も同じ高さ・体重を示し、翼は「8フィート(約244cm)」としています。ザンビアでGPSをつけた野生個体は4.9〜6.3kgでした(Acácioほか2021)。
数字は資料によって少し幅があり、松江フォーゲルパークの解説板では「体長約120cm・体重約6kg」と紹介されています。
ほかの大きな鳥と比べると
| 鳥 | 翼を広げた長さ | 出典 |
|---|---|---|
| ハシビロコウ | 230〜260cm | 上記 |
| タンチョウ | 220〜250cm | Wikipedia |
| アフリカハゲコウ | 225〜287cm | Wikipedia |
| ホオジロカンムリヅル | 約200cm | Wikipedia |
翼を広げると、日本のタンチョウとほぼ同じ大きさ。大人が両手を広げた長さ(身長とほぼ同じ)をゆうに超えます。
ハシビロコウの飛び方
大きな体を持ち上げるため、ハシビロコウの飛び方にはいくつか特徴があります。
飛び立ちは「力いっぱいのジャンプ」
サンディエゴ動物園によると、ハシビロコウはほぼ真上に飛び上がります。そのためには力強いジャンプと、数回の重い羽ばたきが必要です(San Diego Zoo)。
首を縮めて飛ぶ
飛んでいるときは、首をS字に縮めて大きな頭を肩のあたりに引き寄せます(Animal Diversity Web、San Diego Zoo)。サギやペリカンと同じ飛び方で、首をまっすぐ伸ばして飛ぶコウノトリやツルとは違います。名前に「コウ」とつくのに、飛び方はペリカン寄りなのです。
ハシビロコウがペリカンに近い仲間だとわかった経緯は、こちらの記事で詳しく解説しています。

ゆっくりとした羽ばたき
羽ばたきは1分間に約150回とされ、大型のコウノトリの仲間を除けば、鳥の中でもとても遅い部類です(Hancockほか1992、Wikipedia英語版経由)。1秒に2回半ほどの、大きくゆったりとした羽ばたきです。
上昇気流に乗って「輪を描く」
幅の広い翼は、羽ばたかずに滑空するのに向いています。昼間には、暖められた空気の上昇気流に乗って、自分のなわばりの上空を旋回する姿がよく見られます(Animal Diversity Web)。ペアで交代しながら上空を飛ぶこともあるそうです(San Diego Zoo)。
野生ではどれくらい飛ぶ?
飛べるとはいえ、野生のハシビロコウが飛ぶ時間はごくわずかです。ザンビアの観察では、一日のうち飛んでいたのは約1%だけでした(Mullers & Amar 2015、Loftie-Eaton 2016の引用より)。
GPSでわかった移動距離
ザンビアのバングウェウル湿地では、2011年から2018年にかけて、太陽光で動くGPSを野生のハシビロコウに取り付けて追跡した研究があります(Acácioほか2021、Scientific Reports)。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 1日の移動が3km未満だった日 | 全体の81% |
| 1日の最大移動距離(中央値) | 成鳥0.84km、若鳥0.73km |
| 成鳥の1日の平均移動 | 8月(繁殖期)1.1km → 12月 10.5km |
| 行動圏(95%) | 成鳥平均約1,514km²、若鳥平均約1,547km² |
| 渡り | しない(一年中同じ湿地で暮らす) |
ほとんどの日は数kmも動かず、「動かない鳥」は野生でも本当でした。それでも行動圏は約1,500km²と、東京都23区の約2.4倍の広さになります。湿地の水が引いたり増えたりすると、それに合わせて大きく場所を移すためです。乾いた場所からは成鳥が、水が増えた場所からは若鳥が離れていきました。
この研究は、こちらの記事で詳しく紹介しています。

ヒナが飛べるようになるのはいつ?
資料によって少し幅がありますが、生まれてからおよそ95〜105日で巣立ちし、112日ごろには上手に飛べるようになります。
| 資料 | 巣立ち | その後 |
|---|---|---|
| San Diego Zoo | 約95日 | 約125日で独り立ち |
| Animal Diversity Web | 約95日 | 105〜112日ごろまでは飛べず、その後も約1か月は親からごはんをもらう |
| Hancockほか1992(Wikipedia経由) | 約105日 | 112日で上手に飛べる |
巣立ったあとも、しばらくは巣の近くにとどまることがGPS調査でわかっています(Acácioほか2021)。ヒナの姿や子育ての様子は、こちらの記事で紹介しています。

日本の動物園で飛ぶ姿は見られる?
日本の動物園でも、運が良ければ飛ぶ姿に出会えます。当ブログで紹介している各園の様子をまとめました。
| 施設 | 飛ぶ姿について | 展示場 |
|---|---|---|
| 神戸どうぶつ王国 | 大きな羽を広げて旋回することも。サカラはラグーン内を飛ぶ姿がよく目撃されています | 完全屋内の「ビッグビル」 |
| 高知県立のいち動物公園 | ささが大きく空を舞うことも。カシシが飛び立つ瞬間も撮影できました | 広い屋外放飼場 |
| 掛川花鳥園 | ふたばが展示エリアの中を旋回することも | 全天候型の屋内施設 |
| 那須どうぶつ王国 | 屋内展示なので、遠くまで飛ばないように羽を切っています | 完全屋内の「ウェットランド」 |
| 千葉市動物公園 | しずかは飛翔も見せてくれる活発な子。ただし現在は展示休止中(2028年春ごろまで) | ― |
神戸どうぶつ王国「ビッグビル」
ビッグビルは、ガラスや網のない完全屋内の施設です。ハシビロコウが大きな羽を広げて旋回する姿を、間近で見られることがあります。なお、2026年7月に管理人が訪れたときは、サカラはガラス越しの展示エリア「マバンバキャンプ」にいました。
2022年の取材記事では、飼育員さんが「以前は移動のために飛ぶだけだったオスが、上空を旋回するようになった」と話しています(ウォーカープラス)。

高知県立のいち動物公園
国内最大級の屋外放飼場では、ささが大きく空を舞ったあと、池のドジョウを捕まえようとする姿が見られることもあります。管理人は2025年9月、カシシが羽を広げて飛び立つ瞬間を撮影できました。


那須どうぶつ王国のボンゴは「羽を切っている」
ボンゴが暮らす「ウェットランド」は、ワオキツネザルやフラミンゴも一緒に暮らす完全屋内の施設です。管理人が2026年5月に訪れたとき、飼育員さんから「屋内なので、遠くまで飛ばないように羽を切っている。伸びてきたら調整する」と教えてもらいました。
それでも羽をゆっくり広げてバサッと羽ばたくと、見ている人から歓声が上がります。


動物園では「羽を切る」こともある
那須のように屋内で、ほかの動物と一緒に暮らす展示では、飛んでぶつかったりけがをしたりしないよう、風切羽を短く切ることがあります。羽は生え変わるので、伸びてくればまた飛べるようになります。
飛ぶ姿を見るコツ
- 屋内で天井の高い施設や、広い池のある展示場ではチャンスあり
- 飛び立ちはほぼ真上への力強いジャンプで、一瞬のこと。連写できるカメラ設定にしておくと安心
よくある質問
Q. ハシビロコウは飛べない鳥?
A. いいえ、飛べます。野生では上昇気流に乗って旋回することもあります。ただし飛ぶ時間は一日の1%ほどです。
Q. 翼を広げるとどれくらい?
A. 230〜260cmです。タンチョウ(220〜250cm)とほぼ同じ大きさです。
Q. 渡りをしますか?
A. しません。一年中同じ湿地で暮らし、水位の変化に合わせて湿地の中で場所を移します。
Q. 動物園のハシビロコウはなぜ飛んで逃げないの?
A. 屋内の展示施設やネットのある展示場で暮らしているほか、屋内展示の那須どうぶつ王国のように、遠くまで飛ばないよう羽を切っている例もあります。
まとめ
- ハシビロコウは飛べる。翼を広げると230〜260cmで、タンチョウとほぼ同じ
- 首を縮めて飛び、羽ばたきは1分間に約150回とゆっくり。上昇気流に乗って旋回もする
- 野生でもほとんどの日は3km未満しか動かない。それでも行動圏は約1,500km²ある
- ヒナは95〜105日ほどで巣立ちし、112日ごろには上手に飛べる
- 神戸どうぶつ王国、のいち動物公園、掛川花鳥園では、飛ぶ姿が見られることもある
ハシビロコウの餌は何?
好物はハイギョ…と思いきや、ザンビアでは獲物の7割がナマズ。野生での食べ物、じっと待つ狩りの成功率、全国の動物園で与えている餌まで紹介しています。

ハシビロコウに会える全国の動物園
国内8施設・15羽の性格と見分け方をまとめています。飛ぶ姿を見に行く前にどうぞ。

参考文献
- Acácioほか(2021)Changes in surface water drive the movements of Shoebills. Scientific Reports 11: 15796.(論文)
- Hancock, Kushlan & Kahl(1992)Storks, Ibises and Spoonbills of the World. Academic Press.(Wikipedia英語版経由)
- Loftie-Eaton(2016)Biodiversity Observations 7.58.(PDF)
- Animal Diversity Web「Balaeniceps rex」(ページ)
- San Diego Zoo「Shoebill」(ページ)
- ウォーカープラス(2022-07-14)(記事)
- 当ブログの取材記事:神戸どうぶつ王国、のいち動物公園、ささ、ふたば、那須どうぶつ王国、千葉市動物公園、松江フォーゲルパーク
- 翼の比較:Wikipedia英語版(タンチョウ、アフリカハゲコウ、ホオジロカンムリヅル)

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