動物園で静かに佇み、私たちを惹きつけてやまないハシビロコウ。 彼らの前に立ったとき、「この鳥たちは一体どこから、どのような道を辿って日本へやってきたのだろう?」と思いを巡らせたことはありませんか?
実は、日本で暮らすハシビロコウたちには、遠い海を越えてやってきたそれぞれの壮大なドラマが隠されています。今回は、彼らの知られざるルーツと、日本の動物園にやってくるまでの道のりについて紐解いてみたいと思います。動物好きなお子さんの、ちょっと深掘りした自由研究のテーマとしてもおすすめのお話です。
日本のハシビロコウ、その多くは「タンザニア」の湿地帯から
日本の動物園で会えるハシビロコウたちのルーツをたどると、もっとも多いのがアフリカの「タンザニア」です。
たとえば、上野動物園の「アサンテ」や「サーナ」、そして掛川花鳥園の人気者「ふたば」もタンザニアの出身。彼らの多くは、アフリカの広大な湿地帯で生まれ育った野生の個体たちです。はるか遠く、タンザニアの豊かな自然の中で魚を狙っていた彼らが、今こうして日本の動物園で私たちと見つめ合っている。そう考えると、奇跡のようなご縁を感じずにはいられません。
野生のハシビロコウの生息地について:
アフリカの雄大な自然のなかで、静かに獲物を待つ彼らの本来の姿はまさに自然の神秘です。動物園の環境とはまた違う、彼らの故郷であるアフリカの湿地帯がどのような場所なのか。野生のハシビロコウたちのダイナミックな生息エリアについて詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事もあわせてご覧ください。

新たな希望を背負って。ザンビアとコンゴからの仲間たち
タンザニア以外の国からやってきた仲間もいます。上野動物園で暮らす「ミリー」は、ザンビアからやってきました。



さらに近年、ハシビロコウファンの間で大きな話題となったのが、神戸どうぶつ王国に迎えられた「サカラ」と「クラル」です。この2羽は、はるばるコンゴ民主共和国からやってきました。この「コンゴからの輸入ルート」を新たに切り拓くのは、複雑な手続きや輸送の壁があり、並大抵の苦労ではなかったと想像します。野生動物を国境を越えて移動させるには厳しい国際ルールをクリアする必要があり、さらに神経質な彼らへの負担を考えると、関係者の方々の並々ならぬ努力があったことでしょう。
なぜ、そこまでして新しいルートを開拓する必要があったのでしょうか?それは、日本に「新しい血統」をもたらすためです。日本のハシビロコウたちが将来にわたって命をつなぎ、アジアでの繁殖を成功させるためには、遺伝的な多様性が欠かせません。
コンゴ出身の2羽が暮らす神戸どうぶつ王国:
日本のハシビロコウの未来という、とても大きな希望を背負ったサカラとクラル。この貴重な2羽が暮らす神戸どうぶつ王国の魅力や、緑豊かな園内で彼らがどのように過ごしているかについては、こちらの訪問ガイドでたっぷりご紹介しています。

海を越えるのは命がけ。「ブリーディングローン」や「動物交換」の壁
動物園同士で動物を貸し借りし、協力して繁殖を目指す取り組みを「ブリーディングローン(繁殖貸与)」と呼びます。
陸続きのヨーロッパの動物園であれば、車や列車を使って比較的スムーズに個体を移動させることができます。しかし、海に囲まれた島国である日本が海外の動物園と血統交換を行うには、飛行機での長時間の輸送が避けられません。過去には、繁殖のための「動物交換」として、上野動物園にいた「ターノ」がドイツへ旅立ち、代わりにドイツから「シュシュ・ルタンガ」が日本へやってくるという、海を越えた大移動がありました。
もともと野生のハシビロコウは「単独行動」を好む、非常に神経質で警戒心の強い鳥です。そのため、ただでさえ相性の良いパートナーを見つけるのが難しい上に、飛行機に乗って全く違う環境へ移ることは、彼らにとって計り知れないストレスとなります。ハシビロコウたちにとっても、海を越える移動はまさに「命がけの壁」なのです。
動物園での出会いが、もっと特別なものに
一羽一羽が背負っている故郷の景色や、海を越えてきたドラマを知ることで、目の前にいる彼らの存在がより愛おしく、特別なものに感じられるはずです。次に動物園でハシビロコウに会うときは、ぜひ「遠いところから、よく日本に来てくれたね」と心の中で語りかけてみてください。
彼らのルーツや背景を知ると、今すぐその姿を直接見に行きたくなりますよね。日本国内でハシビロコウに会える動物園や、それぞれの施設での見どころをわかりやすくまとめています。今度のお休みは、ぜひこちらのリストを参考に、お近くの動物園へ足を運んでみてはいかがでしょうか。


コメント