日本に眠るハシビロコウの原点!玉川大学所蔵の美しい「19世紀のリトグラフ」

皆さんは、170年以上前のヨーロッパで描かれた「ハシビロコウの絵」をご覧になったことはありますか?

実は、日本国内にある玉川大学教育博物館のデジタルアーカイブに、ハシビロコウの歴史を紐解く上でたまらない魅力を持った、貴重な資料が公開されているんです。

今回は、まるでアンティークの美術書をめくるような気分で、19世紀の美しい「リトグラフ(石版画)」と、それにまつわるお話をご紹介したいと思います。

目次

玉川大学が所蔵する『ロンドン動物学協会年報』

その貴重な資料とは、1851年から1853年にかけての活動をまとめた『ロンドン動物学協会年報』(合冊)です。

ロンドン動物学協会年報(合冊)
[出典:玉川大学教育博物館 館蔵資料(デジタルアーカイブ)]

19世紀のイギリスといえば、世界中から多様な動植物が集められ、博物学の研究が大きな盛り上がりを見せていた時代。ロンドン動物学協会には知識人たちが集い、熱心に新種の報告を行っていました。

玉川大学教育博物館には、当時の年度ごとの年報が一つにまとめられた「合冊」が、良好な状態で保存されています。長い時を経た洋書ならではの重厚感があり、それ自体が歴史を物語るロマンに溢れています。

怪鳥を世界に伝えた鳥類学者と画家

この年報の中で、ホワイトナイル川上流地域に生息する不思議な鳥――そう、我らがハシビロコウを紹介したのが、著名な鳥類学者であるジョン・グールド(1804-1881)でした。あのチャールズ・ダーウィンの進化論のヒントになった鳥を分類したことでも知られる、当時のトップ研究者でした。

実は、ハシビロコウの学名である「Balaeniceps rex(クジラ頭の王様)」は、このジョン・グールドが名付けたもの。あの巨大なクチバシと威厳ある立ち姿を見た彼が、「王様(rex)」と名付けたのも納得ですよね。

そして、彼の報告を視覚的に支えたのが、グールドの工房で働いていた画家 ヨゼフ・ヴォルフ(1820-1899) です。

ヴォルフの手によるハシビロコウの挿絵(リトグラフ)は、羽の質感や鋭い眼光、そしてあの堂々たるクチバシが、驚くほど精密かつ芸術的に描かれています。

単なる絵ではない。最先端の「メディア」としてのリトグラフ

ここで注目したいのは、当時のリトグラフが持つ役割です。 まだ写真という技術が一般的ではなかったこの時代、緻密に描かれた美しい挿絵は、単に「鑑賞して楽しむアート」ではありませんでした。

それは、海の向こうの未知の世界の情報を正確に伝える、最先端の「情報伝達メディア」だったのです。

ヴォルフが描いたこの美しいハシビロコウのリトグラフは、当時のロンドンの知識人たちに「世界にはこんな恐竜のような鳥がいるのか!」と、言葉以上の衝撃と正確な情報を与えたに違いありません。

その後、1860年よりロンドン動物園にハシビロコウがやってくるまでの数年間、イギリスの人々のハシビロコウのイメージはこのリトグラフによって形作られたのです。

絵から現実へ!初めて「生きたハシビロコウ」がヨーロッパにやってきた日
美しいリトグラフで知識人たちを驚かせたハシビロコウですが、その後1860年に、ついに「生きた姿」で初めてロンドン動物園にやってきます。写真もインターネットもない時代、本物の巨大な「動かない鳥」を初めて目の当たりにした当時の人々の驚きと熱狂ぶりは、どれほどだったでしょうか。リトグラフのその後を描いた、ハシビロコウとヨーロッパの歴史の続きは、ぜひこちらの記事でお楽しみください。

まとめ:日本で出会える歴史のロマン

170年以上前にイギリスで発行され、美しいハシビロコウの姿を今に伝える『ロンドン動物学協会年報』。それが巡り巡って、日本の玉川大学に大切に保管されているという事実に、不思議なご縁と歴史のロマンを感じずにはいられません。

いつか実際の展示などで、長い年月を経た本物のリトグラフをこの目でじっくりと鑑賞してみたいですね。

ハシビロコウの少し知的なエピソード、いかがだったでしょうか? これからも「となりのハシビロコウ」では、様々な角度から彼らの魅力をお届けしていきます!

歴史を知るともっと好きになる!週末はハシビロコウに会いに行こう
170年以上前のイギリス人を驚かせた未知の鳥は、今や日本の動物園で私たちを癒してくれる大人気の存在になりました。リトグラフに描かれた威厳たっぷりの姿と、実際の彼らが見せるマイペースな動きを見比べてみるのも楽しいですよ。こちらの記事では、日本国内で会える個性豊かなハシビロコウたちをリストアップしています。ぜひお近くの動物園をチェックして、あなただけの「推しハシビロコウ」を見つけてみてくださいね。

参考文献

世界のハシビロコウたちに会いに行こう
海外の動物園には日本とはまた違った環境で暮らす魅力的なハシビロコウたちがいます。旅行や出張のついでに、少し足を伸ばして現地の施設を訪ねてみませんか?「となりのハシビロコウ」では、世界中のハシビロコウ飼育施設を網羅したリストを公開しています。次の旅の計画に、ぜひお役立てください。

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この記事を書いた人

ハシビロコウを追い続ける、一児のパパ。出張や家族旅行の合間に各地の動物園を巡るのがマイルール。 2025年には息子を連れてウガンダへ野生観察に行きました。 イベント情報から海外情報まで、幅広いハシビロコウについての情報を発信します。

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