ハシビロコウの写真が世界的な写真賞を受賞!Wildlife Photographer of the Year 2026

ハシビロコウ好きにとって、とても嬉しいニュースが飛び込んできました。

「自然写真のオスカー」とも呼ばれる国際コンテスト「Wildlife Photographer of the Year 2026」で、ハシビロコウの写真が「Behaviour: Birds(鳥の行動)」部門の最優秀賞を受賞しました。撮影地は、管理人も2025年に訪れたウガンダのマバンバ湿地です。

この記事では、コンテストの概要から受賞作の見どころ、写真に写っている行動の意味まで、ハシビロコウ好きの目線でご紹介します。

目次

Wildlife Photographer of the Yearとは?

Wildlife Photographer of the Year(WPY)は、イギリスのロンドン自然史博物館が主催する、世界最大級の野生生物写真コンテストです。1965年に始まり、2026年で62回目を迎えました。

2026年は、121の国と地域から過去最多の65,403点の応募がありました。審査は7人の専門家が撮影者名を伏せた状態で行い、「創造性」「独創性」「技術の高さ」の3つの観点で評価します。

賞の仕組みはおおまかに次のとおりです。

  • 総合大賞(Wildlife Photographer of the Year):全応募作の中から選ばれる、その年の最高の1枚
  • 部門賞:「鳥の行動」「哺乳類の行動」「動物のポートレート」「水中」など、テーマ別に最優秀作を選出
  • ヤング部門:17歳以下の若手フォトグラファーが対象
  • People’s Choice(ピープルズ・チョイス):一般の人の投票で決まる賞

受賞作は自然史博物館で展示され、その後世界各地を巡回します。野生生物写真家にとって、まさに頂点ともいえる賞です。

2026年の結果をざっくり紹介

2026年の受賞作は、10月13日にロンドン自然史博物館で開かれた授賞式で発表されました。

総合大賞に輝いたのは、イタリアの写真家フェデリコ・ヴェロネージさんの「The Aftermath」。ナミビアで、亡くなった子ゾウを運ぶ母ゾウの姿をとらえた白黒写真です。ヤング部門の大賞も、ジンバブエで撮影されたフンコロガシの白黒写真「Labour of Love」が受賞しました。大人とヤングの両方の大賞がモノクロ作品になったのは、コンテスト史上初めてだそうです。

そして19ある部門のひとつ「鳥の行動」部門で最優秀賞に選ばれたのが、今回の主役であるハシビロコウの写真です。

鳥部門の受賞作「Scenes from the Swamp」

受賞作のタイトルは「Scenes from the Swamp(湿地の情景)」。草の茂る湿地で、2羽のハシビロコウがそれぞれクチバシに植物をくわえている一枚です。


Scenes from the Swamp|Wildlife Photographer of the Year(ロンドン自然史博物館)

撮影したのは南アフリカのイサク・プレトリウスさん

撮影者のイサク・プレトリウスさんは、南アフリカ出身の野生動物写真ガイドです。アフリカ各地で写真家のグループを案内しながら、撮影の技術だけでなく、自然についての知識も伝えてきました。アフリカの自然の素晴らしさを伝え、保全への関心を高めることを目標に活動しています。

実はプレトリウスさんは、2013年にもクモの巣に絡まった海鳥の写真で同じ「鳥の行動」部門を受賞しています。このときは南アフリカ出身者として初めての同部門受賞でした。今回は13年ぶり2度目の部門賞ということになります。

細いカヌーで出会った「2羽」

プレトリウスさんは、ガイドと一緒に細いカヌーに乗って湿地を進んでいました。そこで、1羽ではなく2羽のハシビロコウに出会えたことを、とても幸運だったと振り返っています。

2羽は、植物を引き抜いてはくわえ、落とし、また引き抜くという動作を何度も繰り返していたそうです。公式の解説では、繁殖ペアが巣材を集めていた可能性が高いとされています。

【コラム】管理人も同じ湿地でハシビロコウに会ってきました
実は管理人も、2025年8月に息子と2人でマバンバ湿地を訪れています。エンジン付きのボートで30分ほど進んだあと、手漕ぎのボートに乗り換え、ガイドさんが水草をかき分けて奥へ進んでくれました。受賞作のプレトリウスさんと同じように、細い舟で静かに近づくスタイルです。私たちはボートを漕ぎ出してわずか5分で1羽に出会い、そのまま30分ほど、ほとんど動かない姿を見守りました。

ハシビロコウ好き視点で見る、この写真のすごさ

「動かない鳥」が、せっせと動いている

ハシビロコウといえば「動かない鳥」。管理人がマバンバ湿地で出会った1羽も、30分間ほとんど同じ姿勢のままでした。

ところがこの写真の2羽は、植物をくわえて活発に動いています。じっと獲物を待つ姿とは正反対の、子育てに向けた準備をしているかもしれない瞬間です。ハシビロコウは湿地の植物を積み上げて巣を作るため、巣材集めは繁殖の始まりを告げる大切な行動といえます。

飼育下での繁殖は世界でもほとんど例がなく、日本ではまだ成功していません。上野動物園でも、繁殖に向けて2羽を非公開にする取り組みが始まったばかりです。だからこそ、野生のペアが巣材を集める姿は、ファンにとっても研究の面でもとても貴重な記録だといえます。

実は「コウノトリ」の仲間ではない

英語では「shoebill stork(ハシビロコウ=靴のようなクチバシのコウノトリ)」と呼ばれることも多いハシビロコウ。ですが、公式の解説でも触れられているとおり、実際にはペリカンやサギ、トキに近い鳥です。名前に「コウ(=コウノトリ)」が入っている日本語名も、実は少し誤解を招く名前なんですね。

撮影データもチェック

公式ページには撮影データも公開されています。

項目内容
カメラCanon EOS R5
レンズ500mm f4
設定1/2500秒・f4・ISO1250
撮影地マバンバ湿地(ウガンダ・ワキソ県)

1/2500秒という速いシャッタースピードで、植物をくわえた一瞬の動きをぴたりと止めています。揺れるカヌーの上で、超望遠レンズを使ってこの一枚を撮ったと思うと、技術の高さに驚かされます。

数が減り続けるハシビロコウと、写真の力

受賞作の公式解説は、ハシビロコウの厳しい現状にも触れています。生息域全体で成鳥は5,300羽未満しか残っておらず、その数は今も減り続けているそうです。

プレトリウスさんは以前から、美しい野生の姿を見せることで人々が自然を大切に思うようになり、それが保護につながると語ってきました。世界中から6万点以上が集まるコンテストで、ハシビロコウの写真が選ばれたことには大きな意味があります。この鳥を知らなかった人たちにも、その存在と危機を伝えるきっかけになるからです。

【コラム】ハシビロコウはなぜ絶滅の危機にあるの?
ハシビロコウは、IUCNのレッドリストで「絶滅危惧II類(VU)」に分類されています。最大の原因は、農地開発や野焼きなどで住処の湿地が失われていることです。違法な取引も今なお続いています。さらに、2個産んだ卵のうち基本的に1羽しか育たないため、一度減ると数がなかなか戻りません。受賞作の2羽が巣材を集めるペアだとしたら、それだけ貴重な瞬間をとらえた一枚だといえます。

受賞作を見るには

受賞作の写真は著作権で守られているため、このブログに直接掲載することはできません。ぜひ公式サイトで、実際の一枚をご覧ください。

ロンドンの自然史博物館では、2026年の受賞作を含む100点の写真展が2026年10月16日から始まっています。会期は2027年7月11日までの予定です。ロンドンを訪れる予定がある方は、ぜひ足を運んでみてください。

日本での巡回展の予定はまだ未定ですが、もし企画されるのであれば楽しみです!

実物に会いたくなったら、まずは国内の動物園へ
世界の動物園で飼育されているハシビロコウは約40羽で、そのうち15羽が日本にいます。日本は世界有数の「ハシビロコウ大国」なのです。現在は全国8つの施設で、性格も見た目も少しずつ違う個体たちに会えます。ただし、上野動物園は近日中に2羽が非公開になる予定(移動日は延期・未定)で、千葉市動物公園は2028年春まで展示を休止しています。お出かけ前には最新情報をチェックしてください。

まとめ

  • 世界最大級の野生生物写真コンテスト「WPY2026」で、ハシビロコウの写真「Scenes from the Swamp」が鳥の行動部門の最優秀賞を受賞
  • 撮影者は南アフリカのイサク・プレトリウスさんで、13年ぶり2度目の同部門受賞
  • 撮影地はウガンダのマバンバ湿地。2羽が巣材を集める、繁殖ペアらしき貴重な瞬間をとらえた一枚
  • 成鳥は5,300羽未満とされ、数は減り続けている

「動かない鳥」として知られるハシビロコウが、世界の舞台で「動き」を評価されたのは、ファンとしてなんだか嬉しいニュースです。この受賞をきっかけに、ハシビロコウとその住処である湿地に関心を持つ人が、世界中で増えるといいですね。


【参考文献・データ出典】

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この記事を書いた人

ハシビロコウを追い続ける、一児のパパ。出張や家族旅行の合間に各地の動物園を巡るのがマイルール。 2025年には息子を連れてウガンダへ野生観察に行きました。 イベント情報から海外情報まで、幅広いハシビロコウについての情報を発信します。

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